「転倒が多いから車イス」って考えは好きになれない
タイトルの意味が分かったあなたは介護職と思われるので説明は省きたいところだが、そうじゃない人が読んでいると思うので詳しく説明する。
「転倒が多いから車イス」というのは、介護施設ではよくある考えというか、対応なのだ。
とある入居者Aさんが、毎日のように転ぶ状況が続くと、普通の介護施設ではこう考える。
「このままでは取り返しのつかない大怪我をしてしまう。そうなる前にご本人が歩かなくて済むよう、車イスで移動してもらおう」
その結果「転倒が多いから車イス」のスローガン(?)の下、車イス生活がスタートしてしまうのだ。
上記の考えは一見問題ないように思える。
でも、これだと誰も幸せにならないんだよ。
私だって、現場の人間だから転倒ばっかされても困るという施設の気持ちはよーーーーーーーーーーーーーーく分かる。
夜中だろうが朝方だろうが、ホーム長や主治医に連絡しなきゃならんし、事故報告書を書かなきゃいけないし、再発防止策も話し合わなきゃならないし、怪我の具合によっては行政報告もしなきゃならない(らしい。ホーム長がやってることなので、詳しくは知らないが)
もちろん、ご家族にも連絡する。たまにキレる家族もいるらしいが、たいていは申し訳なさそうに「ご迷惑おかけしてすみません」と言われる。
何よりご本人がつらいわけだ。
何回も転んだら痛いし、迷惑かけてるなって気持ちになるのか「大丈夫」って言い張る。
自分でできることは自分でやってほしい、と私は思う。
もちろん、身体的な理由や認知症だったりで難しくなってくるけど「危険だから職員がやる」というのは違うと思うのだよ。
自分が老いた時、歩き方がヨタヨタしてるからって「危ないから座ってて」って言われて、何でもかんでも人にやってもらう状況は嫌でしょ?
手すりにつかまれば歩けるのに、転ぶ可能性が高いからって車イスに乗せられて歩かせてもらえないの嫌でしょ?
そういう当たり前のことは介護職だって分かっているが、現場は一人一人についていてあげられるほど人手が足りてない。
入居者が自分で自分のことができて、生き生きと暮らしていければいいのは分かってる。
それをどうやって実現すればいいのかが分からない。
私も悩んでいる。
「職員がやることによって、リスクを減らす」という、現場の空気に反抗したいけど、どうやったら打破できるのか。
答えは出ない。